2010年08月04日
虫の知らせ ~600kmを越えて届いた思い~
「虫の知らせ ~600kmを越えて届いた思い~」
前日に続き午前様で、事務所を1時半に出た。
自宅へ戻ると、ドアの前に一匹の弱々しいセミがいた。
「じゃまやなあ、あっちいけ」
と持っていた新聞でしっしすると、
ぶんぶん飛び回りドアに何度も体を打ちつけていた。
「これじゃ家に入れない」としばらく様子を見ていると、
そのうち疲れたのか、ドアの近くで、寝室の窓から見える共用廊下の壁の下端にとまった。
「やれやれこれでようやく家に入れる」
と、ドアを閉め、しばらく仕事の続きををしていた。
4時くらいだろうか、トイレに立ったとき、
あのセミどうしているかと寝室の窓から見てみると、
先ほどの壁にいるのだが、廊下の外側の壁を少しずつ登っているようだ。
その歩みは遅く、そのスピードだと手すりまで上がるのは夜が明けるなあと思いながら、
仕事に戻った。
それから3時間くらい経ち、時計は朝7時を廻った。
一段落したので、
パンをかじっていると、そういえばとセミはどうなったか
と見に行った。
とすると驚いた。
共用廊下の外側の壁を登り切り上面にいるのだ。
でさらに驚いたのは、頭がこちらにあったこと、
つまり、こちらを向いているのだ。
普通、壁伝いに上がれば、頭は向こう側のはず。
廻れ右をしないとこうはならない。
で、お互いによく見える位置にいる。
こちらを凝視しているみたいだった。
「けったいやなあ、変なの」
さあ、少し仮眠をとるかと横になり、
どれほどの時間が経っただろうか。
携帯メールで目が覚めた。
たまたま東京の実家に戻っていた嫁からだった。
眠い目をこすり見たその画面には
「今朝7時半、おばあちゃんが亡くなりました。」
長い入院生活を送っていた義祖母の訃報だった。
その時、「あっ」と叫んでいた。
急いで、あのセミを見に行ったが、そこには何もいなかった。
孫娘が結婚し大阪へ嫁いで12年、
入院前に「大阪は遠いから年寄りには無理、でも行ってみたいなあ」
と微笑みながら柔らかな物腰で語るおばあちゃんだった。
最期の時を迎えるときに、姿を変え見に来てくれたんだと直感した。
今年初めて実家へ帰った孫娘とひ孫たち、その僅か数日に合わせて天国へ召されるとは
さいごまで優しいそして孫思いのおばあちゃんだったなあ。
私の倍以上の人生を歩んだおばあちゃん、
安らかに眠ってください。

Posted by ふかざわはん at 00:11
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